オペラといえば、私たちにとっては敷居の高い代物といったイメージがありますが、その敷居をほんの少しだけ下げてくれたのが、稀代のテノール歌手、ルチアーノ・パヴァロッティ(1935-2007)ではないでしょうか。
まず彼の代名詞ともいえる楽曲は、なんと言っても歌劇『トゥーランドット』の中で歌われる「誰も寝てはならぬ」。
彼が歌うこの曲が、過去に全英のシングルチャートでトップになったとのこと。
この快挙だけでもすごいですが、それによってパヴァロッティの存在を、あるいはオペラの存在を世に知らしめることになります。
さらに1992年から約10年間行われたチャリティ・イベント『パヴァロッティ&フレンズ』では、ジャンルの垣根を超えたアーティストが、彼のために数多く出演。
とりあえず、私が知っているだけ挙げさせていただくと、スティング、ブライアン・メイ、ブライアン・アダムス、ボーノ(U2)、エリック・クラプトン、スティービー・ワンダー、ライオネル・リッチー、マライア・キャリー、ジョン・ボン・ジョヴィ、ディープ・パープル(リッチー・ブラックモアの脱退後)etc
たった1人のオペラ歌手のために、これだけ多くのアーティストが出演するなんて、本当にすごいです。
この毎年行われていた『パヴァロッティ&フレンズ』でオペラに興味を持った、という若い方もおられるのではないでしょうか。
今回ご紹介するのは、その『パヴァロッティ&フレンズ』の記念すべき第1回から、スティングと共演した『Panis angelicus(日本タイトルは『天使の糧』)』という曲です。
この曲、もともとはトマス・アクィナスという人が作曲した讃美歌『Sacris solemniis』の最後の2節になるのだそうです。
実は私もこの曲は、この『パヴァロッティ&フレンズ』で知りました。
以前紹介した『ウィー・アー・ザ・ワールド』では、パヴァロッティが別格過ぎて、じゃっかん浮いた感がありましたが(こちらを参照)、この曲ではまさに、パヴァロッティの本領発揮!
あのスティングでさえ、彼の引き立て役のようになってしまうのですから、本当に凄いです。




おそらく、より原曲に近いのはこちらかもしれません。




翌年の『パヴァロッティ&フレンズ』では、ブライアン・アダムスとともに『オ・ソレ・ミオ』を披露。
作詞家兼評論家の湯川れい子さんは、ブライアン・アダムスのこの歌唱を、親心全開でヒヤヒヤしながら聞いていたそうです。



ところで、そんなパヴァロッティのニックネームは「キング・オブ・ハイC」。
これは、男声としては最も高いとされている「二点ハ」の音を地声で歌ったことから、このようなニックネームがつけられました。
つまり「キング・オブ・ハイC」の「ハイC」とは「二点ハ」のこと。
その、「キング・オブ・ハイC」というニックネームを決定づけたのは、このアリア(オペラの中で歌われる歌)。
ラスト近くで連続9回の二点ハが出てくるこのアリアを、彼は堂々と歌い上げて、聴衆の熱狂させたといわれています。